ビジネスリーダーの為の労務管理塾《労働法編》講義録NO.8

労働法講義 講義録8

「年次有給休暇」3回目となります。

有給休暇、何日残っていますか?

日頃、有給休暇を請求しない従業員が、確認のために、有給休暇
の残日数を聞いてきたら….ひょっとすると、退職を考えている
のかもしれません….あるいは、疲れが溜まっているのかも知れ
ません….

日頃から、コミュニケーションをしっかりとっておかないと…

今回は、法定有給休暇の残日数の計算です。

その説明に入る前に、消滅時効について...

労働基準法第115条
「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償そ
の他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権
は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。 」

退職手当(退職金)の請求権は、5年...それ以外の賃金、災
害補償その他の請求権は、2年...請求せずに放っておくと、
時効になり、請求する権利が消えますよ...

有給休暇も全労働日の8割以上継続勤務等により、時季を指定し
て請求する権利⇒(請求権)です。よって、請求せずに放ってお
くと、2年で消えてしまいます。

有給休暇の時効は、基準日から起算して2年となります。
結論をいいますと、基準日は、その期間の出発点なので、その
1年間に未消化の有給休暇は、翌期間の末日(当期間の期首から
2年)までに限り繰越すことができ、翌々期間は、時効となり
繰越せないということです。
つまり、翌期間のみ未消化の有給は繰り越せる!

残日数を計算する場合には、その点も考慮します。

それでは、本題に入ります。

法定有給の取得日数は、前回、説明いたしました。

例えは、平成25年10月1日入社の正社員Aさん(全労働日の8割以
上勤務という前提で考えていきます。)

先ず、入社後、6箇月経過後(平成26年4月1日⇒ここから法定有
給休暇が付与される※基準日)からの1年間(平成26年4月1日から
平成27年3月31日)に10労働日、付与されます。次は、(平成27年
4月1日~平成28年3月31日)は、1労働日増えて、11労働日、次は、
(平成28年4月1日~平成29年3月31日)は、また、1労働日増えて
12労働日、次は、(平成29年4月1日~平成30年3月31日)は、2労
働日増えて、14労働日…..

では、Aさんの有給休暇取得状況は以下の通りとして、…
平成26年4月1日~平成27年3月31日 有給休暇3日取得
平成27年4月1日~平成28年3月31日 有給休暇6日取得
平成28年4月1日~平成29年3月31日 有給休暇13日取得
平成29年6月に3日有給を取得

平成29年8月20日に、Aさんが、「私の有給休暇は何日残っていま
か?」と質問がありました。

Aさんの年次有給休暇の基準日は、入社6月経過した時の月日、
つまり、毎年4月1日となります。(8月1日入社の場合の基準日は、
毎年2月1日ですね。)

よって、

●平成27年3月31日時点の残日数  3日消化
・10日-3日=7日(次期に繰り越し)

●平成28年3月31日時点の残日数  6日消化
先ずは前期繰越分から
・前期繰越7日-6日=1日⇒0日 ※時効で繰越不可!
・新規付与11日(次期に繰り越し)

●平成29年3月31日時点の残日数  13日消化
先ずは前期繰越分から
・前期繰越11日-11日=0日
次に新規付与分から
・新規付与12日-2日=10日(次期に繰り越し)

●平成29年8月20日時点の残日数 3日消化
・前期繰越10日-3日=7日
・新規付与14日

結局、平成29年8月20日時点では、7日+14日=21日となります。
21日のうち、7日は、時効の関係で平成30年3月31日までに消化し
ないと、消えてしまします!

今回は、原則的なケースで、説明しました。

事業所によっては、年次有給休暇の斉一的取扱い(例えば、全労
働者、基準日を一律4月1日とする…)や分割付与(例えば、入
社後6月経過前に10日のうちの5日を分割して先に与える…)
をしていたり、前期繰越分がある場合でも、前期繰越分から消化
せず、当期新規付与分から消化していく場合など、例外的な形も
存在します。

例外的な取り扱いなどは、就業規則に規定があるばずです。
就業規則がどうなっているか? 必ず確認すべきです!!